子宮頚癌について、検診の必要性

子宮頚癌とは?

子宮頚癌(子宮頚がん)は、子宮頚部に発生する癌の一種です。この病気は子宮に発生する癌のうち約7割を占めており、特に30代から40代の若い女性に多く見られる腫瘍です。年々、若い世代の子宮頚癌が増加しており、近年では20代での発症例も増加しています。毎年約1万人がこの病気に罹患し、その結果として約3000人が亡くなっており、若い世代の死亡の原因として多いのが子宮頚癌です。これから結婚出産を考える女性や小さな子供を育てている女性の命を奪う恐ろしい疾患です。

日本産婦人科学会HP 子宮頚癌

検診を通して早期発見がなぜ重要なのか?

子宮頚癌は癌の原因、癌化の過程のメカニズム、そして、癌になる前の状態が解明されており、初期の癌や前がん状態を検出する有効な検診システムが確立しています。子宮頚癌やその前がん病変を早期に発見すれば完全に治る確率が高まり、根治が期待できる病気です。婦人科での内診は避けたいと感じる方も多いかもしれませんが、子宮頚癌の早期発見と予防には定期的な検診が不可欠です。ワクチン接種と検診を組み合わせることで、ほとんどの子宮頚癌を未然に防ぐことができます。現在では、子宮頚癌は根絶可能な疾患の一つであると考えられています。女性の健康を維持し、将来の幸福を守るためにも、定期的な子宮がん検診を受けることをお勧めします。

子宮頚癌の主な原因とその予防

子宮頚癌の主な原因はヒトパピローマウイルス(HPV)

子宮頸がんの主な原因は、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染です。特に高リスク型のHPVが子宮頚部の細胞に影響を与え、がんの発症を促進します。感染経路は性行為によるものがほとんどですが、HPV感染自体は特殊な感染症ではありません。およそ8割の女性が人生のどこかで必ずHPVに感染することがわかっているくらいありふれたウイルスです。ほとんどの女性では自分の免疫反応により知らない間にウイルス感染が治りますが、感染後に免疫系がウイルスを排除できない一部の女性が10年程度の年月を経て癌化します。

予防としてのHPVワクチン接種

HPVワクチン接種は、主にHPV感染を予防し、それによって子宮頚がんの発症を抑制する効果があります。現在最も多く使用されているシルガード9はコンジローマの原因になるHPV型を含め、合計9タイプのハイリスクHPV型の感染を防ぐことができます。このワクチンで防ぐことのできる9タイプは子宮頚癌全体の9割程度を占めるため、ワクチン接種を受けるだけで、多くの子宮頚癌を未然に防ぐことができます。ただし、このワクチンにはすでに感染しているウイルスを排除する効果はないため、ワクチン効果を最大限に受けるためには、はじめての性交渉を経験する前の若年者に接種する必要があります。このワクチンの定期接種の対象者が小学6年生から高校1年生なのは性交経験前に接種することが重要だからです。別の記事でも書きましたが、ワクチンの安全性に関しては徹底的に検証されており、非常に安全なワクチンです。どのご家庭にも大切なお子様宛に接種券が届いていると思いますので、必ず接種させてあげて下さい。

子宮頸がん検診の基本情報

子宮頚癌検診の対象者

子宮頚癌はHPV感染が原因で発症するため、性交経験がない女性はHPVに感染する機会がないため、検診を受けるメリットがほとんどありません。こちらのブログでも記載しましたが、性交経験のない女性に行う内診は非常に苦痛を伴いますし、性交経験がない方は検診を受ける必要がありません。検診を受ける必要がある女性は、ずばり「性交経験のある女性全員」です。精度の高い検診ですが、1回の検診では見逃されることがありますので、できれば毎年検診を受けることをお勧めします。

子宮頚がん検診の手法と具体的なプロセス

子宮頸がん検診は塗抹法とLBC法の二つがありますが、LBC法の方が再現度、検出感度ともに塗抹法を上回っており、最近ではLBC方が主流になりつつあります。具体的にいうと、クスコという膣鏡をつかって子宮頚部を観察してやわらかいブラシを使って子宮頚部表面の細胞を採取します。この診察と検診操作自体にはほとんど痛みはありませんので安心してください。採取した細胞は中枢の検査センターに送られ、そこで細胞診診断士が異常な細胞がないか確認します。

村中医療器

検診のメリットと早期発見の重要性

早期発見で完治が期待できる理由

前述しましたが、子宮頚癌は発生原因から癌化の過程まで解明されています。そして癌になる前の状態である前がん病変がわかっています。検診で前がん病変が見つかった場合、子宮頚部円錐切除のみで病変の切除が可能になり、根治が期待できます。また、浸潤癌がみつかっても初期であればあるほど根治の可能性があがります。

検診によって生じる可能性のあるトラブルやリスク

検診により生じるリスクはほとんどありませんが、ブラシで子宮頚部を擦る際に少量の出血が生じる可能性があります。出血はあったとしても、その日のみで出血が続くことは通常ありません。

検診を受けるときの不安や疑問

検診に抱く不安や誤解

内診されることへの痛みや不安、婦人科検診のようなプライベート診察に対する不安、過去の婦人科受診の際のトラウマや不快な思い出、婦人科検診への漠然とした知識不足などさまざまな不安や誤解を持たれている方がいます。婦人科検診は性交経験のある女性のすべてが受けるべき検診です。検診を受けることで救われる命があります。

心配なことや聞きたいことがあれば何でも聞いてください

婦人科の診察はちょっと敷居が高いですよね。初めて受診するときや初めて検診を受けるときはたくさんの不安があると思います。どんなささいなことでもいいので気軽に医師やスタッフまでお問合せください。

検診のスケジュールや予約について

検診のスケジュールや予約

これまで検診を受けたことがない人は、まず検診を受けることを推奨します。これまで検診を受ている人は1年に一度程度の検診をお勧めします。検診の予約は、随時受け付けています。当院では、できる限り多くの方が検診を受けられるよう、診察前の待ち時間を極力減らすように努力しております。忙しい女性が自分のことを後回しにしないように、隙間時間で気軽に受診され、検診を受けられるような体制を目指しています。

検診の費用と助成制度について

検診の費用と助成制度

検診の費用はクリニックや病院、検診センターによって異なります。石川県では集団検診と個別検診(すこやか検診)を行っております。すこやか検診(お勤めでない20歳以上の方向け)クーポンが自宅に送られてきた方は、自治体の助成を受けることができます。多くの自治体の助成は2年に1回です。ご自身が住まわれている自治体によって助成が異なりますのでご確認下さい。

石川県の各自治体の助成状況(令和5年度時点)

治体対象者受診間隔HPV併用検診
金沢市20歳以上2年に一度なし
野々市20歳以上前年度未受診なし
白山市20歳以上前年度未受診なし
内灘町20歳以上75歳以下1年に一度なし
かほく市20歳以上1年に一度あり

定期的な婦人科検診で期待できること

定期的な婦人科検診は様々なメリットがあります

  • 子宮頚癌の死亡率を下げることができる。
  • 普段から婦人科のかかりつけ医をもつことで、何かあったときに気軽に受診できる。
  • 子宮頚癌検診だけではなく、超音波や内診も同時にすることで子宮筋腫や卵巣嚢腫、子宮内膜症などの疾患を早期に発見できる。

検診後のフォローアップ

異常が見つかった場合の追加検査と対応

子宮頚がん検診は異常な結果が出た後のフォローアップが重要です。詳しくはこちらのブログにも記載していますが、精密検査が必要になった場合は、HPV検査やコルポスコープによる高度な精密検査が必要になるため、通常の検診センターやクリニックや病院では対応できないことがあります。当院では、HPV検査はもちろんのこと、コルポスコープによる精密検査も対応できます。検診の結果だけではなく、精密検査の結果や今後のケアについてもわかりやすく説明させて頂きますので安心してください。

最後に

子宮頚癌は、根絶な可能な疾患の一つとまでいわれるようになりました。子宮頚がん検診をうけることは女性の健康を守るうえで最も重要な選択です。あなたの未来のため、家族の未来のために今日から検診を受けましょう!

投稿者プロフィール

坂本人一
坂本人一院長
大学病院で10年以上、診療と研究に従事してきました。産婦人科だけではなく、尿漏れや頻尿などの女性泌尿器疾患、高血圧や脂質異常症などの女性の生活習慣病の予防治療に力を入れています。漢方マニアです。美容医療が趣味で自分にもいろいろ試しています。当院では、自分がやってよかったと思える美容医療だけを厳選して提供してます。なんでもご相談下さい!
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