自治体やクリニックにもよりますが、子宮頸癌検査を受けると結果の用紙が郵送で届くことが多いのではないかと思います。

異常なしと書かれていれば安心できますが、なかには要受診、もしくは要精検と記載された結果が届いたことがある方も多いと思います。

例えば、細胞診結果:【ASC-US】【要精検】なんて手紙が届くと思いますが、検診を受けた方にとってはこれがどういう意味なのかまったくわからないと思います。検診結果をもって病院を受診したけど、追加の検査が行われて、定期的な通院が必要と言われたけど、自分の病気が何なのかよくわからないという方もいらっしゃると思います。

ここでは、子宮頸癌の結果について、一般の方が理解しやすい用語と表現で解説します。

そもそも子宮頸癌検診ってどんな検査?

子宮頸癌検診は写真のブラシを使って子宮頸部を擦りとって採取した細胞を集めて、その細胞形態を顕微鏡でみることで正常か異常かを見分ける検査です。検診センターやクリニックで採取された検査検体は中央の検査センターに送られ、そこで細胞診検査士や細胞診専門医が肉眼でみて細胞形態を確認しています。

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子宮頚癌検査の結果

現在日本では、ベセスダシステムと呼ばれる分類で子宮頚癌検診の結果を判定しています。これが一般の方にとって非常にわかりづらく、難解なのであえて簡単な表現を交えて解説します。ちなみに、ベセスタシステム結果をまとめたものは以下の通りになります。

ベセスタシステム推定病変結果方針
①NILM非腫瘍性所見定期検診異常なし、1年ー2年の定期的な検診
扁平上皮系異常
②ASC-US軽度扁平上皮内病変の疑い要精密検査HPV検査が望ましい。HPVの有無で対応が変わる
③ASC-H高度扁平上皮内病変の疑い要精密検査コルポ、生検が必要
④LSILHPV感染、軽度異形成要精密検査コルポ、生検が必要
⑤HSIL中等度~高度異形成、上皮内癌要精密検査コルポ、生検が必要
⑥SCC扁平上皮癌要精密検査コルポ、生検が必要
腺系異常
⑦AGC腺異型、腺癌疑い要精密検査コルポ、生検、頸管+内膜細胞診が必要
⑧AIS上皮内腺癌要精密検査コルポ、生検、頸管+内膜細胞診が必要
⑨Adenocarcinoma腺癌要精密検査コルポ、生検、頸管+内膜細胞診が必要
⑩Other maligその他の悪性腫瘍要精密検査原発巣の検索が必要

おそらく上記の表をみてもほとんどの方が意味不明だと思います。簡単にいうと、腫瘍性の病変がない=正常なので結果が①NILMとでれば心配いりません。逆に、この①NILM以外の結果が異常ということになります。子宮頸癌は大きく分けて扁平上皮癌と腺癌に分類されます。そのため、扁平上皮癌系統の異常細胞(②~⑥)と腺癌系の異常細胞(⑦~⑨)で分類が分かれます。

②ASC-US:これは軽度異形成などの軽度扁平上皮系の腫瘍があるのか、それとも炎症性変化した正常細胞なのか細胞の形態だけでは見分けがつきにくいときに判定されます。これは細胞診の検診の限界であり、それが病気なのかどうかは追加の精密検査を行わなければわかりません。追加の精密検査としても最も推奨されるのが、ハイリスク型HPV検査です。子宮頸癌およびその前がん病変はハイリスク型HPV感染により生じることは以前のブログにも記載しました。HPV検査をして結果が陰性であれば、膣炎や頸管炎の影響で正常細胞が変化しただけの正常ですと判定できますし、HPVが陽性であれば、扁平上皮系の子宮頸部異形成の可能性がありますので、コルポスコープという精密検査ができるカメラで子宮頸部に病変がないかを直視で確認します。病変部分が確認できた場合は、その部位を生検し、組織の検査に出します。

③ASC-H:これも②と同様に正常細胞が炎症などで変化したものかそれとも高度異形成の細胞があるのか判断が難しいときに判定されます。萎縮性変化した正常上皮と鑑別が難しいため、高齢女性で偽陽性になることが多いのが特徴です。こちらもコルポ+生検が必要になります。

④LSIL:Low grade SILといいます。これはHPV感染があり、軽度異形成が示唆される判定です。コルポ+生検の病理組織診で診断を確定する必要があります。

⑤HSIL:High grade SILといいます。中等度から高度異形成、そして上皮内癌が示唆される判定です。同様にコルポ+生検で病理診断する必要があります。

⑥SCC:これは扁平上皮癌細胞の判定です。癌の進行度を確認するためにコルポ+生検をはじめとする各種検査が必要になります。

⑦~⑨は腺系異常細胞の判定です。どれも腺癌の可能性が示唆されます。実は子宮頚癌検査において腺癌の判定は非常に難しいと言われています。検診で見逃されやすい癌がこの子宮頚部腺癌なので、判定結果には注意が必要です。子宮体癌や子宮内頚部に癌が隠れていることもあるのでコルポ検査に精通した専門医による診断とフォローが必要になります。

⑩Other malig:その他の癌細胞が示唆されます。例えば他の臓器の癌が子宮に転移していたり、腹腔内の癌が子宮を通って腹水と一緒に膣内に出てきている可能性があります。全身検索が必要になります。

検診で異常と診断されたら

一般検診ベースで子宮頚部細胞診に異常があった場合、【ASC-US】【ASC-H】【LSIL】【HSIL】のいずれかが多いと思います。これらの細胞診はコルポスコープ検査で精密検査を行い、組織診断で診断を確定する必要があります。コルポスコープは専門医による診断が必要ですので、診断可能な専門医がいるクリニックを受診してください。当院では、高次医療機関で診断・治療を行ってきた専門医が精密検査を行います。精密検査の結果をみて、必要な管理方法と治療方針を説明させて頂きます。手術加療が必要な場合は、高次医療機関への紹介・治療も可能ですので安心して受診して下さい。

投稿者プロフィール

坂本人一
坂本人一院長
大学病院で10年以上、診療と研究に従事してきました。産婦人科だけではなく、尿漏れや頻尿などの女性泌尿器疾患、高血圧や脂質異常症などの女性の生活習慣病の予防治療に力を入れています。漢方マニアです。美容医療が趣味で自分にもいろいろ試しています。当院では、自分がやってよかったと思える美容医療だけを厳選して提供してます。なんでもご相談下さい!
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