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昔は生理痛がひどい人はいなかった?!
患者さんに「昔は子宮内膜症や月経困難症という病気はなかったんですよ」と伝えると大変驚かれることが多いですが、これは本当のことなんですよね。事実、50年前の論文を調べても月経痛に関するものはほとんどないばかりか、子宮内膜症という病気自体出てきません。
50年前の日本では、月経痛や月経随伴症状に悩む女性はほとんどいなかったと考えられています。一方で、現代社会を生きる女性の4割以上の人が月経痛や月経随伴症状で毎月悩んでいるといわれています。この50年間で女性の体が大きく変化したわけではないのに不思議に感じますよね?
月経があるのはごく一部の生き物だけ
そもそも月経がある生き物は哺乳類の中でも高度に進化した霊長類、コウモリの数種、ごく一部のネズミに限られるんですね。進化の過程で、なぜ月経が始まったのかはさまざまな諸説があって、その話をすると長くなってしまうので、一言でまとめると人間の脳が高度に発達したことに伴って、より多くのエネルギーが必要となった妊娠出産から母体を守るために、人間の体が長い年月をかけて進化しながら環境に適応してきた結果が今の月経のスタイルなのだと考えられています。
女性が生涯経験する月経回数が50回から400回まで増えた
このように、何十万年もかけてそのときどきの環境に適応してきた我々人類ですが、最近の150年くらい、世代として7~8世代の間に起こった環境の変化・社会の変革は、過去何十万年の生物学的な変化をはるかに上回るものでした。とくに、栄養状態・食事の劇的な改善、女性の社会進出は50年前では考えられないものでした。50年前の女性の閉経初経年齢は17歳でしたし、20歳で結婚して3人以上の子供を産んで育てるのが普通でした。20代から30代の時期のほとんどを妊娠と授乳で過ごしてきたこの時期の女性には、ほとんど生理がありませんでした。一方現代では、初経年齢が12歳まで早まり、女性の社会進出、晩婚化、少子化に伴い、初産婦さんの年齢が31歳まで上昇しました。その結果、女性が生涯で経験する月経の回数が50年前の50回程度から400回程度まで増えたといわれています。
人類の進化の歴史の中で想定されていなかった回数の月経にさらされている現代女性
進化の過程で、女性という生き物が生涯に400回以上月経を繰り返すことは想定されていなかったと考えられます。そのため、現代女性の体は過剰すぎる月経に適応できていないといえます。月経回数が増えた結果、月経困難症や月経随伴症状のトラブルや子宮内膜症などの器質疾患を患う女性が増加してしまいました。(また、女性の寿命が劇的に伸びたことで閉経後の女性ホルモンがない時期が増えてしまい、更年期や骨粗しょう症、生活習慣病などの病気も一気に増加しました。)
人間の体が進化するまで月経のトラブルに耐えなければいけないのでしょうか?
これからの社会の変革スピードはさらに早くなるかもしれませんし、そんなに変わらないかもしれません。未来がどうなるかは誰にも予想できませんが、おそらく今の環境に女性の体が適応していくのはずっと遠い未来になると思われます。では、それまでの間、女性は過剰な月経を耐え続けなければいけないのでしょうか?
答えはNOです。月経のトラブルの多くはピルやホルモン治療を使うことで劇的に改善することができますし、更年期や老年期のトラブルも適切な治療を行うことで改善することができます。
産婦人科医ができること
女性の体が社会の変化に適応できるようになるまで、医学的にきっちりサポートするのが我々産婦人科医の役目です。どんな些細なことでもかまいません。お力になれると思いますので、一人で悩まずにいつでもなんでも相談してください!
投稿者プロフィール
- 大学病院で10年以上、診療と研究に従事してきました。産婦人科だけではなく、尿漏れや頻尿などの女性泌尿器疾患、高血圧や脂質異常症などの女性の生活習慣病の予防治療に力を入れています。漢方マニアです。美容医療が趣味で自分にもいろいろ試しています。当院では、自分がやってよかったと思える美容医療だけを厳選して提供してます。なんでもご相談下さい!
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