目次
―エビデンスに基づく考え方―
■ 子宮体がんとは
子宮体がん(子宮内膜がん)は、子宮の内側を覆う「子宮内膜」から発生するがんです。
日本では年々増加傾向にあり、特に閉経前後の40〜60代で発症が多いことが知られています。
初期には自覚症状が乏しい場合もありますが、進行すると不正出血(閉経後の出血、生理でない時期の出血など)が起こることが多く、早期発見が重要です。
■ 子宮体がん検診は必要?
子宮頸がん検診のように、全国的な「子宮体がん検診制度」は現時点ではありません。
その理由は、症状のない一般女性に対するスクリーニング検査(子宮内膜細胞診や超音波検査など)が、子宮体がんの死亡率を下げるというエビデンスがないためです。
日本産科婦人科学会の「産婦人科診療ガイドライン婦人科外来編(2023)」でも、
無症状の女性に対してルーチンに子宮体がん検診を行うことを推奨する十分な根拠はない
と明記されています。
■ 当院の考え方
子宮体がん検診については、施設や医師の裁量による部分が大きいのが現状です。
当院では、上記エビデンスに基づき、
無症状の方に対して定期的な子宮体がんスクリーニングは推奨しておりません。
一方で、症状がある方やリスクの高い方には積極的に検査を行っています。
■ 検査をお勧めする方
- 閉経後、または閉経前後で不正出血がある方
- 月経が極端に不順、生理が長引く・量が多いなどの異常がある方
- 超音波検査で子宮内膜が厚い、またはポリープが疑われると指摘された方
- 肥満・糖尿病・高血圧など、子宮体がんのリスクが高い方
- ホルモン補充療法(HRT)中の方
- 乳がんの治療中・治療後の方(特にタモキシフェン内服中など)
これらの方では、子宮内膜が刺激されることで異常増殖が起こりやすくなるため、子宮内膜の状態を確認することが大切です。
当院では、まず経膣エコー検査で子宮内膜の厚さや形態を評価します。
エコー検査は痛みを伴わない、短時間で行える検査であり、子宮体がんの検査をすべきかどうかを判断する重要な手がかりになります。
必要に応じて、子宮内膜細胞診(または組織診)を追加して診断を行います。
■ 更年期の方へ
更年期前後の不正出血は、「ホルモンバランスの乱れだから大丈夫」と自己判断しがちですが、子宮体がんの初期サインであることもあります。
当院では、こうした年代の方に対しては、経膣エコーによる子宮内膜評価と細胞診を組み合わせた検査をお勧めしています。
■ まとめ
- 無症状の女性に対する子宮体がんスクリーニングで死亡率を下げるというエビデンスはありません。
- 検診の実施方針は医療機関や医師によって異なります。
- 当院ではエビデンスに基づき、症状のある方・リスクの高い方に的確な検査を行う方針です。
- とくに更年期前後の不正出血、ホルモン補充療法中・乳がん治療中の方は注意が必要です。
- 経膣エコーは痛みが少なく、「子宮体がん検査を行うべきか」を判断する材料になる有用な検査です。
■ 参考文献
- 公益社団法人 日本産科婦人科学会『産婦人科診療ガイドライン 婦人科外来編 2023』
- 日本産科婦人科学会公式サイト「子宮体がん(子宮内膜がん)とは」
- 国立がん研究センターがん情報サービス「子宮体がん」
投稿者プロフィール

- 院長
- 大学病院で10年以上、診療と研究に従事してきました。産婦人科だけではなく、尿漏れや頻尿などの女性泌尿器疾患、高血圧や脂質異常症などの女性の生活習慣病の予防治療に力を入れています。アンチエイジング、美容医療、健康マニア。話題の美容医療はだいたい試しています。当院では、自分がやってよかったと思える美容医療だけをお手軽価格で提供してます。なんでもご相談下さい!
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