目次
〜10代の子にピルって本当に大丈夫なの?〜
「婦人科でピルを勧められたけど、うちの子、まだ10代なのに…」
「ピルって避妊薬じゃないの?成長に影響が出たり、将来妊娠できなくなったりしないの?」
娘さんの体のことを思うからこそ、戸惑いや不安を感じるのは当然のことです。
実際、当院にも同じような心配の声を多くいただきます。
でも、“ピル=避妊薬”というイメージだけでは語りきれない医学的な役割があるのです。
特に、学校に行けないほどのつらい生理痛(=月経困難症)は、治療が必要な「病気のサイン」であることもあります。
本記事では、10代の子どもに対するピル治療の科学的な根拠と、なぜ産婦人科医があえてピル治療を提案するのか――その理由を、できるだけわかりやすくお伝えします。
「つらい生理」は体質ではなく、治療できる病気のことも
「生理痛はみんな我慢しているもの」「若いから仕方ない」と思われがちですが、
毎月寝込んだり、学校に行けなかったり、保健室で過ごすほどの痛みは「月経困難症」と呼ばれる病気です。
この中には、以下のような背景があることもあります:
- 子宮内膜症(10代でも発症します)
- 子宮腺筋症
- ホルモンバランスの乱れによる排卵障害
こうした病気の早期発見・早期治療が、将来の不妊リスクを減らすことにもつながります。
ピルは治療薬です。10代でも安心して使えます
「ピル=避妊薬」という印象をお持ちの方は多いですが、
産婦人科では月経困難症やPMS(生理前のイライラや体調不良)など、女性のつらい症状を改善する“治療薬”として使われています。
💊ピルの働きとは?
- 排卵を一時的に止めてホルモンの波を安定させる
- 子宮内膜を薄くし、生理の量と痛みを軽減
- 生理周期を整え、予測しやすくなる
- 内膜症の進行を抑える
これにより、痛みが軽くなる・生活の質が向上するだけでなく、将来の病気の予防にもつながるのです。
「10代に使って大丈夫?」→ 科学的根拠があり、安心して治療できます
低用量ピル(LEP製剤)は、10代の子にも安全に使えると、
以下のような医学的なガイドラインで明確に推奨されています:
🔹日本産科婦人科学会
🔹米国産婦人科学会(ACOG)
🔹Cochraneレビュー
✅ 将来の妊娠に悪影響を及ぼすという証拠はありません
✅ 成長や発育に影響を与えるリスクは非常に低く、安全性は確立されています
若いうちから産婦人科のかかりつけ医を持つということ
近年、「プレコンセプションケア(将来の妊娠や健康を見据えたサポート)」という考え方が注目されています。
これは、妊娠する前の段階から体と心の状態を整えておくことが、将来の妊娠や健康を守るためにとても大切だというものです。
生理の悩みや婦人科の不調を放置せず、思春期のうちから産婦人科で相談する習慣を持つことは、将来の病気予防・不妊予防・メンタルケアにもつながります。
🌸性交経験がない場合でも、診察はおなかの上からの超音波検査(腹部エコー)で行うことができるため、痛みや恥ずかしさを感じることなく安心して受診できます。
生理がつらい、周期が不安定、体調に不安がある…そんなときは、我慢せずにぜひ一度ご相談ください。
「まだ子どもだから…」ではなく、
「若いうちから体を大事にする力を育てる」ことが、人生を支える第一歩になります。
最後に:
お子さんの治療にピルを勧めるとき、私たちは「今だけでなく将来を見据えての選択」であることを大切にしています。
どうか安心して、ご不安なことは何でもご相談くださいね。
参考:科学的根拠
1. 【国内ガイドライン】
◆ 日本産科婦人科学会『思春期・若年女性の婦人科診療ガイドライン2023』
- 推奨内容:10代の機能性月経困難症に対し、低用量エストロゲン・プロゲスチン製剤(LEP製剤)による治療が有効。
- 要点:
- 月経困難症の初期治療としてNSAIDsと並びLEPが第一選択。
- 長期的な疼痛緩和と生活の質(QOL)の改善が期待できる。
- 子宮内膜症の進行予防にもつながる可能性がある。
- 🔗https://www.jsog.or.jp/activity/pdf/gl_fujinka_2023.pdf
2. 【海外ガイドライン】
◆ ACOG(米国産科婦人科学会)Committee Opinion No. 760: Dysmenorrhea and Endometriosis in the Adolescent
- 推奨内容:Adolescents with moderate to severe dysmenorrhea should be treated with hormonal therapy such as combined oral contraceptives (COCs) when NSAIDs are insufficient.
- 補足:
- 若年者の月経困難症は、内膜症の前段階の可能性もあり、早期介入が推奨される。
- 安全性は高く、避妊目的以外の治療適応が重要視されている。
- 🔗 https://www.acog.org/clinical/clinical-guidance/committee-opinion/articles/2018/05/dysmenorrhea-and-endometriosis-in-the-adolescent
投稿者プロフィール

- 院長
- 大学病院で10年以上、診療と研究に従事してきました。産婦人科だけではなく、尿漏れや頻尿などの女性泌尿器疾患、高血圧や脂質異常症などの女性の生活習慣病の予防治療に力を入れています。漢方マニアです。美容医療が趣味で自分にもいろいろ試しています。当院では、自分がやってよかったと思える美容医療だけを厳選して提供してます。なんでもご相談下さい!
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