不正出血は婦人科に受診するきっかけとして最も多い主訴ですが、問題のない生理的な出血から悪性腫瘍による出血のことまで幅広い疾患の可能性があるので早期の受診をお勧めします。

病気以外の生理的な女性の不正出血は、思春期女性と更年期女性に多くみられます。

  1. 思春期女性に多い不正出血
  2. 更年期女性に多い不正出血

1.思春期女性に多い不正出血

初経が始まった後~1年程度の間に、「生理以外の出血がある」「生理の出血がとまらない」「生理が重い」といった症状で婦人科を受診される方が多く、そのほとんどは生理的な無排卵周期による不正出血が原因です。女性の体では、はじめての生理が始まってから1年程度の期間はまだ卵巣機能が安定していないため、生理がきていても実際の排卵が起こっていない状態が普通です。このように無排卵周期を繰り返す時期は破綻出血などの不正出血や、生理が重くなったり、生理不順が起こりやすくなります。この状態は、病気とはいえない人間の生理的な変化の範囲内での症状ですが、症状によっては学業に支障をきたしたり、心身共に大きなストレスになりえます。そのため、症状の重さとどの程度の症状を受け入れて、どこまでの治療をするかを患者さんごとの考え方や生活背景を考慮した上で決定していく必要があります。また、まれではありますが、はじめての生理からずっと出血が多いと訴える女性の中には、実は血液がとまりにくい病気が隠れている方もいますので、「家族に血液凝固異常の方がいる」「昔からあざができやすい」「鼻血がでたらとまりにくい」などの項目に当てはまる方は採血での検査を勧めることもあります。

検査:経腹超音波、凝固系採血

治療:ピル、漢方、黄体ホルモンなど

2.更年期に多い不正出血

更年期は生殖可能な時期から閉経の時期へ移行する女性のホルモンバランスが大きく変化する時期です。閉経時期が近づくと、FSHという卵胞発育を促すホルモンの血中濃度が高くなるため、この時期の女性は卵胞の発育が促されるため、一時的に月経周期が2-3日短くなります。この時期の女性の多くが、「最近、生理の周期が短くなってきた」と自覚しますが、それは閉経時期への入り口へ入ってきているというサインになります。そのあとの時期では、実際の排卵が起こらなくなってくるので月経周期が2-3か月間に伸びていき、1年以上月経がこなくなれば、閉経になったと考えます。この時期の女性では、月経周期が伸びるために、途中で子宮内膜が維持できなくなることで破綻出血による不正出血を起こしやすくなります。この破綻出血も生理的なもので、病気とまではいえないのですが、この時期の女性に好発する子宮体癌などの癌の鑑別が重要になります。癌などの病気の除外診断をしたうえで、患者さんの症状に合わせた治療の選択が重要です。

検査:超音波、ホルモン採血、子宮頸部細胞診、子宮内膜細胞診

治療:黄体ホルモン、GnRhアゴニスト、ピル、IUSなど

このように女性はそのライフステージによって大きくホルモンバランスが変化します。生理的な体の変化のこともありますが、不正出血の症状の中には病気が隠れていることもありますので、症状を認める際は、早めに婦人科を受診することをお勧めします。

投稿者プロフィール

坂本人一
坂本人一院長
大学病院で10年以上、診療と研究に従事してきました。産婦人科だけではなく、尿漏れや頻尿などの女性泌尿器疾患、高血圧や脂質異常症などの女性の生活習慣病の予防治療に力を入れています。漢方マニアです。美容医療が趣味で自分にもいろいろ試しています。当院では、自分がやってよかったと思える美容医療だけを厳選して提供してます。なんでもご相談下さい!
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