産後尿失禁はなぜ起こるか?
妊娠出産は素晴らしいことですが、分娩をきっかけに産後尿失禁の症状をきたす女性が多いことがわかっています。出産後の尿漏れなどの症状に悩む女性は、およそ4割程度いると報告されており、その頻度は出産回数が多くなればなるほど、帝王切開より経腟分娩で多くなります。
- 産後尿失禁はなぜ起こるか?
産後の尿失禁は、子宮や膀胱、尿道などの臓器が下がってきてしまうことによって、尿道括約筋がうまく働かずにふとした弾みに尿が漏れてしまう症状がでます。そのほとんどは腹圧性尿失禁であり、立ち上がったときやくしゃみなどのはずみで尿が漏れてしまい、尿パッドなどを当てて生活しなければなりません。
本来、子宮や腟、尿や膀胱の女性の臓器は骨盤底筋というハンモックのような筋肉で支えられているため、その位置が下がってこないようになっています。しかし、妊娠をきっかけに多く分泌される女性ホルモンの作用で骨盤底筋が弛緩しまい、さらに経腟分娩時の産道損傷により骨盤底筋が障害を受けてしまうので、この骨盤底筋がうまくハンモックとして作用しなくなってしまいます。
その結果、骨盤臓器の位置が妊娠する前より下がって尿道を閉める力が弱まり、腹圧がかかったときに尿が我慢できずに漏れてしまいます。これが産後尿失禁の原因です。
産後尿失禁の予防と治療
産後尿失禁は腹圧性尿失禁に分類されます。この腹圧性尿失禁に有効な薬剤はないため、骨盤底筋体操をして骨盤底筋を鍛えることが唯一の治療法になります。体操といえども毎日しっかり行うことで尿失禁の症状が劇的に改善することが期待できます。治療の効果がすぐでるわけはないので、少なくとも数か月は継続するつもりで気長に体操をしていく必要があります。また、産後の尿失禁を予防するためには妊娠中から骨盤底筋体操を始めていくことが重要です。
骨盤底筋体操の一例
- 仰向けで膝を立てて体の力を抜きます。
- ゆっくり息を吐きながら、膣と尿道を10秒間ぎゅーっと締めます。
- その後、力を抜いて30秒ほど深呼吸しながらリラックスします。
- 1.~4.を10回繰り返します。これを1日数回行います。
重要なのは毎日継続することです。慣れてきたら座った状態でも立った状態でもできるようになりますので、毎日行うようにしましょう。体操の際にお腹に力を入れてしまうと逆効果になってしまいますので腹圧をかけないように注意しましょう。
骨盤体操の動画
わかりやすい骨盤底筋体操のユニ・チャーム公式YOUTUBE動画がありましたのでこちらに引用します。
ユニ・チャーム公式YouTube 尿もれ予防・改善をする骨盤底筋トレーニング【 ライフリー 】
ほとんどの産後尿失禁は上記の動画のような骨盤底筋体操を続けることで改善して尿漏れ症状がなくなっていきますのでしっかり続けていくようにしましょう。
しかし、まったく改善がない場合や生活への支障が大きい場合、また完全に子宮が膣から脱出してしまったような場合はペッサリーリングの挿入や手術が必要になることがあります。手術は腹腔鏡下にメッシュで子宮を吊り上げる仙骨膣固定術や尿道を支持するためのメッシュを挿入するTVT手術などの低侵襲手術になります。これらの手術は女性泌尿器手術に精通した医師のみ行えますので、手術が必要な方は適切な医療機関に紹介して手術治療までサポートさせて頂きます。
まとめ
- 産後の尿失禁は一般的な症状でおよそ4割の女性が経験します。
- 治療のためには骨盤底筋体操を毎日継続して行う必要があります。
- 妊娠中からの骨盤底筋体操が産後の尿失禁を予防するため、出産前から体操を行うようにしましょう。
投稿者プロフィール
- 大学病院で10年以上、診療と研究に従事してきました。産婦人科だけではなく、尿漏れや頻尿などの女性泌尿器疾患、高血圧や脂質異常症などの女性の生活習慣病の予防治療に力を入れています。漢方マニアです。美容医療が趣味で自分にもいろいろ試しています。当院では、自分がやってよかったと思える美容医療だけを厳選して提供してます。なんでもご相談下さい!
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