どんな病気

子宮頸癌は子宮の出口にできる癌です。子宮の出口を医学用語では子宮頸部といいます。この子宮頸部はちょうど膣内から婦人科の内診(腟鏡診)で確認できる位置にあり、この部分に癌が発生してしまう病気が子宮頸癌です。

好発年齢

30代~40代の女性に好発する病気であり、後述しますが、性交開始年齢の低年齢化もあり最近ではもっと若い世代の子宮頸癌患者が増えています。この世代の女性は、仕事や育児でとても多忙なため、自分のケアが後回しになりがちで、病院への受診が遅れたために取り返しのつかない状態になってしまうこともあります。幼い子供や家族を残して癌で死んでしまう可能性がある、とても恐ろしい病気の一つです。

現在、年間1万人以上の女性があらたに子宮頸癌に罹患し、3000人近くの女性が子宮頸癌が原因で死亡しています。その多くが、30代、40代というのが現実です。

症状

初期の子宮頸癌はほとんど痛みがありませんが、典型的な症状としては、不正性器出血や性交時出血があります。進行すると局所に癌が浸潤するため、膣と膀胱、そして直腸に穴が空き、膣から便や尿が漏れてしまう膀胱腟瘻や直腸腟瘻といった状態になってしまい、QOLを大きく損ないます。さらに出血が多くなった場合や他臓器に癌が転移した場合は命が危険にさらされてしまいます。

原因

実は、子宮頸癌の原因とどうやって癌が発生するかはすでにわかっています。子宮頸癌は性交で人から人へ感染するヒトパピローマウイルスhuman papillomavirus(略してHPVといいます)が子宮頸部に感染することがきっかけとなり、発生します。性交で感染するウイルスというと性感染症のイメージがあり、不特定多数のパートナーがいる方や性風俗に従事している女性だけにしか起こらない病気なんではないかと考える方もいるかもしれませんが、それは大きな誤解です。このHPVはすべての女性の8割以上が人生のどこかで感染しているということがわかっています。このHPVに感染しても、多くの女性は自分自身の免疫でこのHPVが体から排除され、自然に治ってしまうので、子宮頸癌になることはありません。しかしながら、ごく一部の女性では、HPV感染がなかなか治らず、長期間子宮頸部に感染が持続することで、前がん病変を経て癌になってしまいます。

HPV感染から発癌まで

8割の女性が人生のどこかでHPVに感染します。感染した9割以上の人は、何もしなくても自然な自分の免疫で感染が治ります。しかし、先ほども記載しましたが、ごく一部の女性ではなかなか感染が治らず、数年から10年の年月をかけて、前がん病変である子宮頸部異形成(異形成は軽度、中等度、高度に分類されます)を経て、最終的に子宮頸癌になります。現在の日本の人口統計では、学生時代の2クラスにおよそ1人が子宮頸癌になります。2クラスに1人は決して特別な病気ではありません。

子宮頸癌は防げる

日本を支える重要な世代の女性の健康を脅かす子宮頸癌ですが、過去に天然痘という恐ろしい疾患が撲滅できたように、実は子宮頸癌という疾患も撲滅が確実な病気の一つと考えられています。理由は二つあります。一つ目は、著しく効果があるHPVワクチンが開発され、世界中の女性がワクチン接種を受けられるようになったこと。そして、二つ目は、癌化の過程がはっきりわかっている(長期間の異形成を経て癌になる)のでその間に、感度の高い子宮頸癌検診で癌になる前に診断して治療ができること。

一つ目ですが、これはいわゆる一次予防といわれ、癌を未然に防ぐためのものです。HPVワクチンの安全性は世界でも日本でも科学的に証明されており、接種勧奨も国が再開しています。このワクチンの有効性も明らかであり、このワクチンを打つことで、対応しているHPV感染をほぼ100%防ぐことができます。HPV感染が未然に防げれば、HPVが原因で起こる子宮頸癌になることはありません。このワクチンには欠点らしいものはほとんどありませんが、すでにHPV感染している方には効果を発揮しません。そのため、ワクチンの効果を最大限に発揮するためには、性交を経験する前にワクチン接種する必要があります。HPVワクチンの対象者が小学校6年生~高校1年生相当の女子なのはこれが理由です。

二つ目はいわゆる癌の二次予防といわれ、癌を早期発見し、治療して死亡を防ぐためのものです。HPVには人間の粘膜に感染するもので40種類以上のタイプが存在します。その中でも子宮頸癌を誘発するHPVタイプは13タイプ以上わかっており、既存のHPVワクチンのみではすべての発癌リスクHPVタイプに対応できるではありません。そのため、ワクチンを打ったうえで子宮頸癌検診を併用することがベストです。この子宮頸癌検診はブラシで子宮頸部をこすって細胞を診る検査であり、検査法も確立されており、非常に感度が高い優秀な検診です。婦人科に受診するのは抵抗がある方も多いかもしれませんが、子宮頸癌検診自体の痛みはほとんどなく、内診においても小さいクスコ(膣鏡)を使ったり工夫することで痛みを感じることなく検査をすることができます。

当院の取り組み

  • 仕事と家庭に忙しい世代の女性がスムーズに検診できるように、DXを活用した検診システムを用いて、待ち時間なし結果がメール確認できる体制を構築しています。
  • 痛みや内診に不安がある患者さんもいると思いますので、すべての問診表に「内診に不安がありますか?」の項目を追加して、患者さんの不安を事前に確認しています。さらに疼痛や不安が最小限になるように小さなサイズの検査器具を取り揃えています。
  • 大事な娘さんにHPVワクチンを打つことに不安がある親御さんの気持ちはとても理解できます。安心してHPVワクチンを接種し、娘さんが将来子宮頸癌にならないようにお手伝いします。これまで大学病院でHPVワクチンの研究をしてきた院長が、患者さんの不安に寄り添い、できる限り理解しやすい説明で正しい知識を伝えます。

まとめ

小学校6年生~高校1年生相当の女子はHPVワクチンの対象者であり、公費でワクチン接種できます

HPVワクチンは有効性・安全性ともに優れたワクチンです。

性交経験のある女性は毎年1回子宮頸癌検診を受けることが大切です。

投稿者プロフィール

坂本人一
坂本人一院長
大学病院で10年以上、診療と研究に従事してきました。産婦人科だけではなく、尿漏れや頻尿などの女性泌尿器疾患、高血圧や脂質異常症などの女性の生活習慣病の予防治療に力を入れています。漢方マニアです。美容医療が趣味で自分にもいろいろ試しています。当院では、自分がやってよかったと思える美容医療だけを厳選して提供してます。なんでもご相談下さい!
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