頻尿はトイレに行きたくなる回数が多くなり、急に尿意を催し、トイレが我慢できなくなる状態です。日中のトイレの回数が頻回でトイレが我慢できなくなれば仕事や家事育児に支障がありますし、夜間頻尿になると睡眠の質が低下してしまいます。その病態は様々で、男性の場合は中年男性の前立腺疾患が多いですが、女性の場合は様々な原因で20代から高齢者まで幅広い年代に起こります。女性の頻尿の原因を大きく分けると、①尿量の増加、②膀胱・下部尿路への刺激増加、③膀胱要領の低下、④生活習慣に分類されますが、原因を特定した上で治療を開始することが重要です。

尿量の増加

夜間の脱水が心配で水分を過剰に取りすぎたり、糖尿病などの基礎疾患があり、喉が渇くため飲水を多くしてしまうケースがあります。飲水しないことで脱水になってしまっては元も子もないですが、過剰な飲水をしても尿として排出されるだけですので、頻尿の場合は飲水量をセーブする必要があります。

過剰な飲水:飲水を控える(特に夜間)

膀胱・下部尿路への刺激の増加

過活動性膀胱や、神経因性膀胱、膀胱炎などの炎症の刺激により膀胱が刺激を受けることで急に尿意を感じます。女性の場合、過活動性膀胱や急性膀胱炎が多いです。過活動性膀胱では抗コリン剤やβ3作動薬が効果があり、さらに排尿時疼痛を訴える場合は膀胱炎の可能性が高いので、抗生物質内服や飲水の励行が推奨されます。

過活動性膀胱:抗コリン剤、β3作動薬

膀胱炎の治療:抗生物質内服、飲水励行

膀胱容量の低下

さらに女性特有の原因として、婦人科臓器の疾患による圧排が原因のケースもあります。例えば、子宮筋腫や子宮腺筋症が大きくなると解剖学的に近い位置にある膀胱を圧排することがあり、膀胱の容量が少なくなり、1回尿量が少なくなることで頻尿になります。このケースは過活動性膀胱の治療を行っても効果がないことが多いため、婦人科的な治療が必要となります。また、まれですが血尿などを伴うケースでは、膀胱内に腫瘍ができている可能性もありますので、超音波検査などの精密検査が必要となります。

子宮筋腫、子宮腺筋症:ホルモン治療、手術治療

生活習慣

意外と多いのが、生活習慣による頻尿です。例えば、コーヒーなどの嗜好品をよく飲む方はカフェインが過剰になりやすく、頻尿になっていることがあります。頻尿の症状がある方で、コーヒーがお好きな方は日中に1杯飲む程度にとどめる方がよいと思います。また、夜間の睡眠が浅いことが頻尿の原因になっていることもあります。これは夜間の尿回数が多いという方に多いです。人間は睡眠中にはバソプレシンという抗利尿ホルモンが分泌されるため、寝ている間には尿がつくられず、朝までトイレに行く必要がありません。しかし、睡眠が浅い人はこの抗利尿ホルモンが十分に分泌されず、寝ている間にも尿がつくられ、睡眠中にもかかわらずトイレに行きたくなります。その結果、さらに睡眠が浅くなり、朝までに複数回トイレに行かなければいけなくなります。睡眠はとても重要なので、夜間頻尿のために何回もトイレに行く生活はつらいものです。この場合は、睡眠障害の原因を取り除くことで夜間頻尿がかなりよくなることがあります。例えば、なかなか寝付けない方には睡眠導入剤を使ったり、気持ちを落ち着けるような漢方薬を使うことで睡眠の質がよくなり、抗利尿ホルモンが十分に分泌され、朝までぐっすり寝ることができます。

睡眠障害:睡眠導入剤、漢方薬

①~④は合併していることも多く、それぞれの症状を問診した上で、患者さんのライフスタイルに合わせた治療を行う必要があります。頻尿にお困りの方は当院にご相談下さい。

まとめ

  • 排尿のトラブルは年齢を問わず、女性に多い。
  • 昼間に多いか、寝てるときに何回もトイレに行きたくなるか、頻尿といっても症状が異なれば原因が違うことがある。
  • 命に係わる病気であることは少ないが、生活の質を大きく損なう疾患である。
  • 有効な治療を受けることで症状がよくなるため、我慢せず受診をお勧めします。

投稿者プロフィール

坂本人一
坂本人一院長
大学病院で10年以上、診療と研究に従事してきました。産婦人科だけではなく、尿漏れや頻尿などの女性泌尿器疾患、高血圧や脂質異常症などの女性の生活習慣病の予防治療に力を入れています。漢方マニアです。美容医療が趣味で自分にもいろいろ試しています。当院では、自分がやってよかったと思える美容医療だけを厳選して提供してます。なんでもご相談下さい!
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