こんにちは。最近、患者さんから百日咳ワクチン接種でのお問い合わせが増えてきました。当院でも百日咳ワクチン【トリビック】の入荷しましたので、当院での接種が可能になりました。
今回は「百日咳がどんな病気なのかよくわからない」「妊娠中にどうして打った方がいいのかわからない」といった方に向けて「妊娠中の三種混合ワクチン(百日咳ワクチン)接種」に関する情報を、最新の医学的根拠に基づき、わかりやすくご紹介します。


百日咳とは?なぜ妊婦さんにも関係するの?

百日咳は激しい咳が長く続く呼吸器感染症です。
大人では自然に治ることが多い一方で、新生児や乳児では重症化しやすく、命に関わるリスクが高いことが知られています。

特に、生後2か月未満の赤ちゃんはワクチン未接種のため、感染すると重篤な経過をたどる可能性があります。
このため、妊娠中にお母さん自身が免疫をつけて赤ちゃんを守ることが非常に大切なのです。


日本国内でも百日咳が増えています

実は現在、日本国内でも百日咳の報告数が増加傾向にあります。

百日咳722人で2週連続過去最多を更新[感染症発生動向調査 2025年第13週(3月24~30日)]

これらの背景には、COVID-19後の感染対策緩和や、ワクチンによる免疫が時間とともに低下することが関係していると考えられています。

つまり、今こそ百日咳に対する対策が必要な時期なのです。


妊娠中にワクチンを打つと赤ちゃんを守れる理由

妊娠中に百日咳ワクチン(三種混合ワクチン)を接種すると、
**母体で作られた抗体が胎盤を通じて赤ちゃんに移行(母子免疫)**します。

この移行抗体により、生まれたばかりの赤ちゃんも百日咳に対する防御力を持つことができ、
感染リスクや重症化リスクを大幅に低下させることができるのです。

【科学的根拠】

  • アメリカの研究では、妊娠後期にワクチンを接種した母親から生まれた赤ちゃんに、高い百日咳抗体レベルが認められました(Munoz FM et al., 2014)1
  • イギリスの調査では、妊婦への接種により、生後2か月未満の乳児の百日咳による入院・死亡リスクが大幅に減少したことが示されています(Amirthalingam G et al., 2014)2

トリビック®(三種混合ワクチン)と妊娠中接種について

日本では成人向けの百日咳ワクチン(Tdap)が承認されていないため、
小児用三種混合ワクチン(DTaPワクチン、例:トリビック®)を医師の判断で使用する場合があります。

トリビック®自体は、公式には妊婦接種や母子免疫移行について明記していませんが、
不活化ワクチンであり、免疫学的にも胎盤を通じて抗体が移行することが期待されています

海外では同様の成分を含むワクチンで妊婦接種が広く行われており、
その効果と安全性は十分に確認されています。

海外での豊富なデータに基づき、当院でも適切なタイミングでの接種をご案内しています。


妊娠中に接種しても大丈夫?安全性について

これまでの多くの調査により、妊娠中の三種混合ワクチン接種は

✅ 早産や流産のリスクを増やさない
✅ 先天異常の発生率を高めない
✅ 妊娠経過に悪影響を及ぼさない

ことが確認されています(Munoz FM et al., 20143、Kharbanda EO et al., 20144)。

副反応も、

  • 接種部位の軽い痛み・腫れ
  • まれな発熱・倦怠感

程度で、ほとんどが自然に改善します。
重篤な副作用の報告は非常にまれです。

また、

  • 世界保健機関(WHO)
  • アメリカ疾病予防管理センター(CDC)
  • 米国産婦人科学会(ACOG)

など国際的な専門機関も、妊娠中の百日咳ワクチン接種を公式に推奨しています。



当院ではRSウイルス母子免疫ワクチン「アブリスボ®」も導入しています

赤ちゃんを感染症から守るため、当院では**RSウイルス感染症を予防する母子免疫ワクチン「アブリスボ®」**も取り扱っています。

もし、百日咳ワクチン(トリビック®)とアブリスボ®を両方接種希望される場合は、
1〜2週間程度の間隔をあけて接種されることをおすすめします。

これは、万が一副反応が出た場合に原因を特定しやすくするためです。

どちらも赤ちゃんを守る大切なワクチンですので、ご希望の方は当院までお気軽にご相談ください。

RSウイルス母子免疫ワクチン「アブリスボ®」について


まとめ

  • 現在、日本全国・石川県内でも百日咳の発生が増えています。
  • 妊娠中に三種混合ワクチンを接種することで、お母さんの抗体が赤ちゃんに移行し、生後すぐから守ることができます。
  • 三種混合ワクチン(トリビック®)に加え、**RSウイルス母子免疫ワクチン(アブリスボ®)**も接種可能です。
  • ワクチン接種の安全性は確立されており、世界的にも推奨されています。

未来の赤ちゃんを守るために、今できる準備を一緒に進めましょう。

ご希望の方は、当院までお気軽にご相談ください。

参考文献

  1. Munoz FM et al. Safety and immunogenicity of Tdap immunization during pregnancy in mothers and infants. J Infect Dis. 2014. ↩︎
  2. Amirthalingam G et al. Effectiveness of maternal pertussis vaccination in England: an observational study. Lancet. 2014. ↩︎
  3. Munoz FM et al. Safety and immunogenicity of Tdap immunization during pregnancy in mothers and infants. J Infect Dis. 2014. ↩︎
  4. Kharbanda EO et al. Maternal Tdap vaccination: risk of obstetric events and adverse birth outcomes. JAMA. 2014. ↩︎

投稿者プロフィール

坂本人一
坂本人一院長
大学病院で10年以上、診療と研究に従事してきました。産婦人科だけではなく、尿漏れや頻尿などの女性泌尿器疾患、高血圧や脂質異常症などの女性の生活習慣病の予防治療に力を入れています。アンチエイジング、美容医療が好きで自分にいろいろ試しています。セルフボトックスがルーチンです。当院では、自分がやってよかったと思える美容医療だけをお手軽価格で提供してます。なんでもご相談下さい!