はじめに
「カンジダや膣炎を繰り返しているのでなんとかしたいです」
といった患者さんの声をよく聞きます。カンジダや膣炎を繰り返すと生活の質が低下してしまいます。症状を繰り返す方の治療は難しいことが多いですが、ここではカンジダや膣炎を繰り返す方に向けて再発予防のための生活習慣や考えられうる治療法を記載します。
繰り返す膣炎とカンジダ症とその原因
- 膣炎とは?
膣内にはたくさんの常在菌がおり、健康な女性であれば、乳酸杆菌が多く含まれており、やや酸性になっているのが正常な状態です。しかし、何かのきっかけで膣内の環境が変化してしまうと、膣内の常在菌である細菌やカンジダなどの真菌のバランスが崩れてしまいます。その結果、炎症が生じてオリモノの変化やかゆみ、痛みなどの症状が出現します。
- 原因
膣炎は一般細菌や膣の常在菌であるカンジダ菌が増えることで発症しますので、いわゆる性感染症ではありません。おもな原因は、体調不良などの免疫力の低下や疲れ、加齢による変化などです。また、抗生物質を内服したときは、膣内細菌が死滅してカンジダ菌(真菌は抗生物質が効かない)だけが生き残って増えてしまうためカンジダになることがあります。
- 症状を繰り返す原因
多くの方は、膣炎やカンジダになってもクリニックで治療を受ければ症状はすぐに改善しますの大きな問題になることはあまりありません。一方で、一部の患者さんでは膣炎やカンジダの再発を定期的に繰り返すことがあり、大きく生活の質を低下させてしまいます。婦人科に通っても通っても症状を繰り返すのはつらいですが、なぜ定期的に膣炎になるのか、カンジダになるのか、わかっていないことも多いためこれといったいい治療法がないのが現状なのです。
医学的根拠に基づく対策と治療
- 予防方法
まずは、食事に気を付けて十分な睡眠をとり、体調を管理することが最も重要です。また、膣内の環境をよくするために、おりものシートはこまめに変える。カンジダは湿潤環境を好むのでなるべくタイツやスパッツを履かない。下半身を締め付けすぎない。入浴後は陰部をよく乾かすなどの生活習慣が大切です。また、ストレスをため込まないように、適度に運動をすることも大切です。膣炎やカンジダを繰り返す患者さんを診ていると、ストレスフルな仕事をしていたり、忙しい毎日を送っている方が多い印象がありますので、まずは生活を整えましょう。
- 早期治療
そして、大切なのは何かおかしいなと思ったときにすぐに婦人科を受診することが大切です。膣炎やカンジダは初期症状のうちに治療することで症状が増悪する前に簡単に治療することができます。一方で、症状を我慢しているうちに症状が重症化して膣と外陰全体の強いかゆみや痛みに進行することもありますので、オリモノがなんか変、かゆみがあるなど些細な症状に気付いた時点で婦人科を受診するようにしてください。
- 膣内フローラの改善
その他、最新の医学的根拠に基づく対策として膣内フローラ(膣内細菌叢)を改善するという選択肢があります。以前より腸内や膣内には様々な菌が住み着いていると考えられていましたが、次世代シークエンサーの開発によりとても細かい細菌の種類やその数や分布までわかるようになりました。おどろくべきことに、人間の体の中には100兆から~1000兆個の細菌が、種類でいうと約1,000種類というとんでもない数の菌が住み着いて共生してます。この数は人間の細胞の数よりも多く、私たちが思っている以上に人間の体に対して重要な役割(体の免疫や健康を維持すること)を担っていることがわかってきました。さらにこの腸内フローラは人それぞれ全く異なることも明らかになっており、様々な疾患との関連が現在進行形で研究されています。
- 膣内フローラ(膣内細菌叢)に関わる最新の知見
膣内フローラに関する研究は日進月歩で進んでおり、ここで紹介する論文以外にも多くの研究がされています。まだわかっていないことも多いですが、膣内フローラの医学研究は、今後の婦人科疾患治療において注目されている分野です。とくに女性の体でもっとも重要な菌は乳酸菌の一つであるラクトバチルス・クスパタス菌であり、さまざまな疾患から女性の身体を守っているのではないかと考えられています。
引用:ラクトバチルス・クリスパタス菌に関する論文データ
- クリスパタス菌の経口摂取および膣への投与により細菌性膣症および膣カンジダが抑制される(R Mandar et al. Benef Microbes. 2023 Apr 18;14(2):143-152)
- クリスパタス菌の産生するフェニル乳酸は高い抗菌作用を持つ(Omar Abdul-Rahim et al. J Bacteriol. 2021 Sep 8; 203(19):e0036021)
- クリスパタス菌は尿路感染を抑制する(Chang Hyun Song et al. Proc Natl Acad Sci USA. 2022)
- クリスパタス菌の占有率の高い女性は妊娠高血圧症候群のリスクが低い(Xiao Li et al. mSphere. 2023 Jun 22;8(3))
- 膣内におけるクリスパタス菌の占有率の高い女性は早産のリスクが低下する(Unnur Gudnadottir et al. Scientific Reports volume 12, Article number: 7926(2022))
上記のことからも、ラクトバチルス・クリスパタス菌は女性器の環境を維持する点で非常に重要な役割を担っています。では、膣内フローラを改善させ、ラクトバチルス・クスパタス菌を増やすためにはどうするべきでしょうか?実は、膣内や子宮内の菌はすべて腸管由来であることが少しずつわかってきています。膣内フローラを改善させるためには、体にとっていい善玉菌(ラクトフェリン菌・ラクトバチルス菌)を積極的に接種することが重要だと考えられています。
膣内フローラ改善サプリ
体にとっていい善玉菌を接種しましょうといってもなかなか難しく、さらに接種したところで胃酸で分解されてしまい腸内までなかなかいきません。そのため、腸内細菌層・膣内細菌を改善されるためには胃酸で分解されない乳酸菌を接種する必要があり、通常の食事のみでは改善が困難です。
当院では、膣内フローラを改善したいという方にむけて膣内フローラ改善に特化したサプリ【ラクト・フローラ】の取り扱いを開始しました。
ラクト・フローラの特徴
- 胃酸で溶けない【耐酸性カプセル】を使用
- 膣内に多いラクトバチルス菌15種類を含む(クリスパタス菌含有)
- 母乳に多く含まれ、新生児を病原菌から守るラクトフェリン菌
- 乳酸菌3種、ビフィズス菌5種を含む
これらの女性にとって不可欠な善玉菌が、嫌気性菌の増殖を防ぎます。さらに善玉菌が膣内pHを低下させることで免疫調整を行い、健康な膣内フローラの恒常性を維持することで、様々な病原菌から膣内の免疫バリアとなる可能性があります。膣炎やカンジダを繰り返しており、再発を予防したいと考えている方は膣内フローラの改善をぜひお試しください。
1日2カプセル【60粒入/1か月分】7,260円
不明点などあれば、当院までお気軽にお問合せください。
引用論文
- Mändar R, Sõerunurk G, Štšepetova J, Smidt I, Rööp T, Kõljalg S, Saare M, Ausmees K, Le DD, Jaagura M, Piiskop S, Tamm H, Salumets A. Impact of Lactobacillus crispatus-containing oral and vaginal probiotics on vaginal health: a randomised double-blind placebo controlled clinical trial. Benef Microbes. 2023 Apr 18;14(2):143-152. doi: 10.3920/BM2022.0091. Epub 2023 Mar 1. PMID: 36856121.
- Abdul-Rahim O, Wu Q, Price TK, Pistone G, Diebel K, Bugni TS, Wolfe AJ. Phenyl-Lactic Acid Is an Active Ingredient in Bactericidal Supernatants of Lactobacillus crispatus. J Bacteriol. 2021 Sep 8;203(19):e0036021. doi: 10.1128/JB.00360-21. Epub 2021 Sep 8. PMID: 34280003; PMCID: PMC8425402.
- Song CH, Kim YH, Naskar M, Hayes BW, Abraham MA, Noh JH, Suk G, Kim MJ, Cho KS, Shin M, Lee EJ, Abraham SN, Choi HW. Lactobacillus crispatus Limits Bladder Uropathogenic E. coli Infection by Triggering a Host Type I Interferon Response. Proc Natl Acad Sci U S A. 2022 Aug 16;119(33):e2117904119. doi: 10.1073/pnas.2117904119. Epub 2022 Aug 8. PMID: 35939684; PMCID: PMC9388105.
- Li X, Tian Z, Cui R, Lv J, Yang X, Qin L, Liu Z, Zhang C, Jin C, Xu Y, Chen ZJ, Zhao H, Zhao S. Association between Pregestational Vaginal Dysbiosis and Incident Hypertensive Disorders of Pregnancy Risk: a Nested Case-Control Study. mSphere. 2023 Jun 22;8(3):e0009623. doi: 10.1128/msphere.00096-23. Epub 2023 Apr 5. PMID: 37017519; PMCID: PMC10286721.
- Gudnadottir U, Debelius JW, Du J, Hugerth LW, Danielsson H, Schuppe-Koistinen I, Fransson E, Brusselaers N. The vaginal microbiome and the risk of preterm birth: a systematic review and network meta-analysis. Sci Rep. 2022 May 13;12(1):7926. doi: 10.1038/s41598-022-12007-9. PMID: 35562576; PMCID: PMC9106729.
投稿者プロフィール
- 大学病院で10年以上、診療と研究に従事してきました。産婦人科だけではなく、尿漏れや頻尿などの女性泌尿器疾患、高血圧や脂質異常症などの女性の生活習慣病の予防治療に力を入れています。漢方マニアです。美容医療が趣味で自分にもいろいろ試しています。当院では、自分がやってよかったと思える美容医療だけを厳選して提供してます。なんでもご相談下さい!
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