子宮頸がんワクチン(HPVワクチン)
子宮頸がんワクチンの効果と働き
子宮頸がんワクチン(HPVワクチン)の効果は、HPV感染を未然に防ぐことです。HPVワクチンがHPV感染を予防する効果は非常に高く、接種するだけで対応しているHPV型感染をほぼ100%防ぐことができます。
HPVワクチンがHPVの感染だけではなく、子宮頚癌を予防することができる医学的なエビデンスも蓄積されてきており、実際にスウェーデンではHPVワクチン接種により子宮頚癌の86%が予防できたと報告されています。
一方で、①子宮頚癌を誘発するすべてのHPV型に対応しているわけではないため、必ず子宮頸がん検診も受ける必要があること、②すでに感染しているHPVを排除する効果はないため性交経験前の女児に接種することがベストであること、に留意しておく必要があります。
子宮頸がんワクチン(HPVワクチン)の種類と接種方法
HPVワクチンは日本の定期接種ワクチンです。定期接種ワクチンは小児期すべて接種し終えると考えている方が多いかもしれませんが、HPVワクチンの定期接種対象者は、中学1年生から高校1年生相当の女児です。親御さんが責任をもって接種させてあげる必要があります。
現在日本で定期接種の対象となっているワクチンは以下の三つです。
サーバリックス |
2価ワクチン |
ガーダシル |
4価ワクチン(コンジローマに対応) |
シルガード |
9価ワクチン(コンジローマ+7種類のHPV型に対応) |
9価ワクチンで対応できるHPVは日本人の子宮頚癌の88.2%であるため、9価ワクチンを打つだけで9割弱の子宮頚癌を予防することが期待できます。
また、海外では男性に対するHPVワクチン接種も行われています。HPVは子宮頸がんだけではなく、陰茎がん、中咽頭がんなど様々な癌の原因になります。男性に対しても大きな恩恵がありますので、当院では接種希望の方に接種を行っております。ただし、男性は公費接種の対象ではないため自費になります。
HPVワクチンの安全性と副反応
一昔前、HPVワクチンに関してショッキングな映像と副反応問題が連日のようにメディアで取り上げられていたことが記憶に新しいのではないかと思います。この報道のこともあり、非常に危険なワクチンという印象をお持ちの方も多いのではないかと思いますが、その後に厚労省が行った大規模調査により、HPVワクチンの安全性は確認されました。安全性を示すデータは以下の引用の通り、公的機関によって公開されております。
【全国疫学調査(祖父江班)】①HPVワクチン接種歴のない者においても、HPVワクチン接種後に報告されている症状と同様の「多様な症状」を呈する者が、一定数存在した。②本調査によって、HPVワクチン接種と接種後に生じた症状との因果関係は言及できない。
NAGOYA STUDYでも同様に、ワクチンを打っている人にも打っていない人にも同じくらいの確率で疼痛や意識消失やしびれ、けいれん発作などがこの世代の女性に起こっていたことがわかりました。これは、もともと失神発作などを起こしやすい思春期女性において、ワクチンの副反応に対する恐れや不安、そして筋肉注射特有の痛み(HPVワクチンはとくに痛い)が誘引となって起こった症状の一つとして結論付けられました。
もちろん、本当にHPVワクチンによって重篤な副反応が生じたケースもあります。しかし、HPVワクチンの重篤な副反応の頻度は接種1万人あたり約3人程度であることがわかっています。インフルエンザワクチンの重篤な副反応が接種1万人あたり約15人という数字からしても、HPVワクチンだけに重篤な副反応が多いわけではないことがわかっていただけると思います。
さらに諸外国のHPVワクチン接種率は軒並み高水準でありますが、これまで重篤な副反応が問題になったことはありません。(海外のHPVワクチン接種率:アメリカ61%、カナダ87%、イギリス83%、オーストラリア82%)
HPVワクチンの安全性が十分に確かめられた結果、2022年4月からHPVワクチンの定期接種の積極的勧奨が再開されています。
これらの医学的根拠よって、日本で安心してHPVワクチンを接種することができるようになりました。