目次
はじめに
このブログ記事は、2025年3月までに接種期限が迫っているキャッチアップ世代(現在高校2年生~27歳の女性)と高校1年生の女性(同じく接種期限が2025年3月まで)に向けた記事です。
- 重要なポイント
- 子宮頸癌ワクチンを打つだけで9割近くの癌が予防できるため必ず接種するべき
- 以前報告された副反応とワクチンの因果関係は完全に否定されており、安全である
- 10月以降に初めて接種をする場合でも3月までに接種完了できる
- 1回もしくは2回接種でも予防効果が報告されている
- 現在、全国的なワクチン不足であり、希望者全員が接種できない可能性がある
- コロナワクチン、インフルエンザワクチンの間の接種間隔について
ワクチン接種の対象者は、公費でワクチンの恩恵を受ける最後の機会です。10年前に報道された悪質なデマを鵜呑みにせず、最新の正しい情報に基づき、ワクチン接種を受けるようにしてください。
子宮頸癌ワクチンの効果と副反応問題について
以前の記事でも詳しく解説していますが、子宮頸癌ワクチンの子宮頸癌を予防する効果は著しく、ワクチン接種を国全体で推し進めている北欧諸国では、子宮頸癌の発生率が劇的に減ってきています。この10年間で世界中でワクチン接種が進み、世界中の子宮頸癌が減少していっています。そのため、2060年を目安に子宮頸癌という病気が撲滅できるであろうと推定されています。日本では、10年前にセンセーショナルな映像とともに報道されたワクチン副反応騒ぎで多くの方が接種の機会を奪われてしまいましたが、その後の厳密な調査、科学的な研究により、ワクチンと一連の副反応の因果関係は完全に否定されています。
子宮頸癌は20代、30代、40代の若い女性に多い癌です。70人に1人が罹患するほど身近な病気です。子宮頸癌のせいで子どもを持つことができなかった方、小さな子どもを残して亡くなってしまった方、やりたかった仕事を最後までやり遂げられなかった方、私たち産婦人科医はそういった患者さんをたくさんみてきました。ワクチンを打つことでそういった患者さんがいなくなることが科学的に証明されています。
最新の正しい情報は、すべて厚生労働省や石川県の公式ページに載っています。誰の話かわからない情報やSNSの無責任な情報を鵜呑みにしないで、ご自身の目で正しい情報を確認したうえでご自身や娘さんが、本当にワクチン接種しなくていいままなのかよく考えてください。
厚生労働省 子宮頸癌とHPVワクチン
石川県 HPVワクチン接種について
10月以降のワクチン接種のポイント(3回すべて公費で接種するためには)
- 9月中に1回目の接種が完了している場合
9月に1回目を接種した方は、11月中に2回目を接種【1回目から2か月空ける】。そして3月に3回目を接種する。(予定通り、通常スケジュールでOK)
- 9月中に1回目の接種が完了していない場合
通常の接種間隔で接種できない場合のスケジュールでの接種が可能です。
※シルガード9 電子添付文書2023年3月改定より引用
「1か月以上の間隔とおく」とは、翌月の同日の前日に1か月経過したと考えるため、翌月の同日から接種可能になります。
10月15日に一回目接種→11月15日から二回目の接種が可能
- つまり、11月に初めて1回目を接種したとしても、【通常の接種間隔で接種できない場合】のスケジュールに従い、12月に2回目接種、そして3月に3回目の接種を終了することができます。
- やや複雑なので簡単にまとめると、来年3月までにすべて接種するためには1回目を11月中に接種し、2回目を年内に接種する必要があります。ただし、12月は年末でワクチン接種に対応できないクリニックが多いので注意が必要です。
1回、または2回の接種でも免疫が得られる可能性
接種スケジュールが非常にタイトなため、予定通りの接種が難しく、3回すべてを公費で接種することが難しい方もいると思います。1回あるいは2回の接種でも十分な免疫が獲得できるという文献や報告もありますので、1回でも2回でも接種するメリットがあるのではないかと考えています。また、公費スケジュールで間に合わない2回目、3回目を自費で接種する方法もあります。
HPVワクチンの単回投与、2回投与の効果、有効性に関する文献データ
※下記情報には国内未承認/適応外の内容が含まれております。メーカーの発表しているデータとはいっさい関係がありません。また、これらの結果がもたらす疾病予防効果や長期的な予防効果については現時点では不明です。
- アフリカ人女性を対象とした臨床試験において、36か月時点での9価ワクチン、2価ワクチン1回接種群の優位な予防効果が認められました。(KEN SHE Study)
- 同じくアフリカ人女性を対象とした臨床試験であり、9価ワクチン1回接種、2回接種、3回接種群のそれぞれのウイルス抗体価が調べられました。1回接種群におけるHPV16に対する接種後24か月後の抗体陽転率は99%でした。【2回および3回接種群は共に100%】(DoRIS)
- オーストラリアの4価ワクチンに対する高度子宮頸部病変の予防効果【オッズ比】は、3回接種群:0.54(効果あり)、2回接種群:0.79(効果あり)、1回接種群:0.95(有意差なし)(BMJ. 2014)
いずれも長期的な予防効果に関しては検証できていないため、これらの結果が疾病予防やいつまで免疫が持続するかどうかは不明な点もあります。1回あるいは2回の接種で文献上、効果が期待できますが、可能な限りスケジュール通りの3回接種を推奨します。
現在のHPVワクチン出荷調整の現状
現在、全国的にHPVワクチン(シルガード9とガーダシル)の需要が急速に高まっており、メーカーからの供給が追いつかない状況です。これに伴い、全国のクリニックではワクチンの入荷が遅延し、希望するすべての方にすぐにワクチンを提供することが難しくなっています。(MSD出荷調整に関するお知らせ)
当院は、県内でのHPVワクチン接種実績が最も多いクリニックとして、比較的多くの在庫を抱えております。しかし、現在の状況ではメーカーによる限定出荷が続いており、解除のタイミングが不明なため、当院でも一部予約に制限をかけている状況です。
ご予約と在庫に関して
- 現在、ご予約を頂いている方の分のワクチンはすべて確保しております。
- ただし、在庫が終了次第、新規のご予約受付は一時終了となります。その後は、ワクチンの出荷待ちリストに基づく順番予約に切り替えさせていただきます。
この状況は非常に厳しいものではありますが、メーカーや自治体と密に連携し、一人でも多くの方にワクチンを提供できるよう、クリニックとして全力を尽くしています。
コロナワクチン、インフルエンザワクチンとの接種間隔について
子宮頸癌ワクチン自体は、ほかのワクチンとの接種間隔のしばりはとくにないので接種間隔をあける必要はありません。ただし、コロナワクチンはどのワクチンとも2週間接種間隔をあけて打つ必要があるので、コロナワクチンとの同時接種はできません。
ややこしいですが、インフルエンザのみコロナワクチンとの同時接種が認められています。
以上、まとめますと
- 子宮頸癌ワクチンとコロナワクチン同時接種はダメ(2週間あける)
- 子宮頸癌ワクチンとインフルエンザワクチン同時接種はOK
- 子宮頸癌ワクチン自体には接種間隔のしばりはない
- インフルエンザワクチンとコロナワクチンの同時接種はOK
- コロナワクチンは他のワクチンと2週間間隔をあける必要がある(インフルエンザは除く)
終わりに
- 子宮頸癌予防のためのHPVワクチンは非常に重要であり、公費接種対象の方は接種を受けることを推奨します。
- また、10月以降に接種を開始してもキャッチアップ期限内に接種完了することができます。
- 文献上、単回あるいは2回投与でも効果が得られる可能性があります。
- 全国的なワクチン不足であり、現在一部のワクチン予約を制限しております。
- ワクチンのお問い合わせはクリニックに直接ご連絡ください。
投稿者プロフィール
- 大学病院で10年以上、診療と研究に従事してきました。産婦人科だけではなく、尿漏れや頻尿などの女性泌尿器疾患、高血圧や脂質異常症などの女性の生活習慣病の予防治療に力を入れています。漢方マニアです。美容医療が趣味で自分にもいろいろ試しています。当院では、自分がやってよかったと思える美容医療だけを厳選して提供してます。なんでもご相談下さい!
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