開業の思いなど

医者になろうと決めてからひたすら目の前の目標に向かって進んできてもう20年近く経ちます。身内に医者がいなかったこともあり、何をどうがんばればいいのかわからない中やってきたので振り返ると、ずいぶん遠回りしてきたような気もしますが、結果としてなりたかった医師という仕事ができている自分はとても運がいい人間なんだと思います。産婦人科医になろうと決めたときは、「産婦人科は訴訟が多い」「過労死する」「男なのに産婦人科なんて変」と周囲からはありがたい忠告を頂きましたが、全部無視しました。そして、分娩を取り扱わないクリニックを作ろうを決めたときに「産婦人科はゲブルト(分娩)してなんぼ」「婦人科だけでは成り立たないよ」と先輩開業医の先生方にアドバイスを頂きましたが、全部無視しました

分娩の面白さは産婦人科医になろうと思ったきっかけの一つであり、今も通常分娩から難産まですべての分娩に立ち会うのは面白くやりがいを感じます。しかしながら、産婦人科医の仕事は妊娠・出産のときだけに必要となるわけではなく、むしろ妊娠出産以外の女性の健康をサポートする仕事が重要なのではないかと私自身は思っています。私は、大学病院で10年以上勤務してきた中で、様々な難しい疾患の患者さんの治療を経験してきました。

  • 思春期の月経不順や月経痛がひどくて学校に行けないような方。
  • 月経痛をずっと我慢し続けた結果、子宮内膜症という病気になってしまい、手術が必要になったり、不妊症になってしまった方。
  • 妊娠中に高血圧症や糖尿病になり、出産後も引き続き治療が必要な方。
  • 過多月経を放置した結果、輸血が必要になるほどの貧血で救急車で搬送される方。
  • 30代-40代の仕事と家庭に充実した時期に癌になって闘病が必要になる方。
  • 妊娠がしたくてもなかなか妊娠できない方。
  • 仕事、子育て、介護の問題が出てくる50代では更年期の多彩な症状に悩まされる方。
  • 検診で高血圧や高脂血症、耐糖能異常があるといわれたけど忙しくてなかなか病院に通院できない40代-50代の方。
  • 頻尿や尿漏れなどのなかなか相談しにくい症状に困っている方。
  • 老年期には萎縮性膣炎や骨盤臓器脱で誰にも相談できずにいる方。

このように様々な症状に悩んで産婦人科を受診される患者さんが大勢います。現在の日本は、減り続ける出生数と妊娠年齢の高齢化、僻地の分娩施設がないことなど、多くの社会的な課題に直面しています。年々子供の数が減り続け、高齢者が増えていくといえば悲観的に聞こえますが、逆に、たくさんの大人の手で一人一人の子供を大切に育てていく素晴らしい社会になっていくと私は前向きに考えています。少子高齢化といわれますが、私自身はこれからの日本には明るい未来が待っていると思っています。そのためには、女性が明るく社会で活躍していくことが非常に重要になるはずです。価値観が多様化し、様々な女性の生き方が尊重される時代だからこそ、産婦人科医が担う役割が非常に重要になっていくと感じています。私は、女性の一生をトータルでサポートするかかりつけ医でありたいと思っています。当院は、これまでの妊娠出産のみを取り扱う産婦人科クリニックではなく、女性の健康を生涯にわたってサポートするかかりつけ医クリニックを目指しています。入院や分娩がない分、これからは外来診療に全力投球していきます!

まだまだ至らないところもあると思いますが、すべての女性が安心して受診できるクリニックを目指して誠心誠意がんばっていきたいと思っていますのでよろしくお願いします!

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