患者さんの引継ぎについて思うこと
地鎮祭も予定通り執り行うことができ、クリニックの工事も始まりました。でもこれからが大変です。スタッフも採用しなければいけない。クリニックを開設するためのいろんな公的な手続きをしなければいけない。機械や薬剤の仕入れもしなければいけない。想定してなかった問題も出てくると思います。勤務医だったこれまでは病院が準備してくれていたいろんなことをこれからは自分がすべてしていかないといけない。自分のやりたい医療を実現するために必要なことといっても、なかなか大変そうです。そして、クリニックのこと以外にも考えないことが、今診察させて頂いている患者さんをどうするかということです。
私は来年の3月いっぱいまで今の大学病院での診療を続けるつもりではいるけど、4月以降は自分のクリニックの診療で手いっぱいになるので大学のでの診療を続けることが難しいと思います。そのため、いま大学病院でみている患者さんを①そのまま自分のクリニックに連れていって引き続き診察する、②大学の先生に引き継いで診て頂く、のどちらかを考えていかないといけないです。
本音をいうと、これまで診させて頂いている患者さん全員をそのまま新しいクリニックでも私が主治医として診察させて頂きたいと思っています。私の診させて頂いている患者さんの多くは、たくさんのドクターの中から私を選んで受診してくれていると思うし(うぬぼれかもしれませんが)、私のことを信頼していろんな心身の悩みを相談してくれていると思う(勘違いかもしれないけど)。なにより、私が誰よりも患者さんのことを真剣に考えて診療に向き合っているつもりです。可能であれば、このまま責任をもって診療させて頂きたいと考えています。そのため、退職までまだ時間がありますが、通ってくれている患者さんに私が大学病院をやめて開業することを少しずつお話しし始めています。
そこで問題になるのが、①通院距離、②大学病院の設備がないと診療できない患者さんです。
①うちのクリニックは西金沢にあるので、私が日々診療している内灘の金沢医科大学とは少し距離があります。とくに医科大は、かほく市や能登方面からの患者さんが多いので、私のクリニックに受診すると通院の距離が今よりも長くなってしまいます。患者さんの負担になったら申し訳ないなと思いながらも、大学をやめてクリニックを開業することをお伝えすると、多くの患者さんが私に診てほしいのでクリニックについていきますとおっしゃってくれます。やさしい患者さんのリップサービスに過ぎないかもしれませんが、本当に医者冥利に尽きます。なかには「一日有給とって、金沢でランチするがてらに通院するよ」とまで言ってくれる能登方面の患者さんもいて、私は本当にいい患者さんたちに支えられているようで本当にありがたく感じています。
そして②です。私は大学病院で10年以上診療する中で、たくさんの難しい病気の患者さんの治療に関わらせて頂いています。ですが、その患者さんたちを私のクリニックで診療するのは難しいとおもっています。大学病院にはすごく珍しい病気や重症な癌患者さんが他の病院やクリニックから紹介されてきます。まったく誰も経験したことのないような重症例や珍しい病気の患者さんを受け持った時には、海外の論文を読み漁りましたし、死にそうな患者さんが心配で何日間も病院に泊まり込んで治療にあたったこともありました。とくに婦人科癌の患者さんは比較的若い方が多く、私と同世代で、小さなお子さんがいる方もたくさんいました。治療がまったく奏効せず、小さなお子さんや家族を残して最期を迎える方もいました。若い方に癌の進行度や生命予後のお話をするのはとてもつらかったですが、患者さんとご家族の人生を左右することなので、包み隠さず、一人ひとりの患者さんに真摯に向き合ってきました。そんな患者さんたちだからこそ、ずっと私が診ていきたいという気持ちは強いです。ですが、私がそういった方の診療に携われてきたのは、大学病院の施設や専門スタッフ、他科医師の協力がおかげです。ハイリスクな妊婦さんの治療は内科の先生や助産師の助けが必要ですし、新生児科医師の応援も必要です。癌患者さんは、病態が急速に変化することもあるので最先端の検査装置や手術室が完備されている施設じゃないとしっかりとしたフォローアップができないため、クリニックで大学病院と同じレベルの診療を続けることは難しいです。責任をもってずっと診療できないことに本当に申し訳なく思っています。大学病院をやめて開業することは、私のことを信頼して頼ってくれてきた患者さんを裏切るようで本当に心苦しいですが、だからこそ、しっかり引継ぎをして患者さんが困らないようにしたいと思っています。さいわい、私が退職するまであと半年近くありますし、今から時間をかけて、大学病院にいる優秀な先生にしっかり引継ぎをさせて頂くつもりです。
なんとなく、とりとめのない文章になっちゃいましたが、私についてきてくれる患者さんに関しては、これまで通り、むしろこれまで以上に誠心誠意、診療にあたらせて頂きます。もしかすると、通院距離は増えてしまうかもしれませんが、これからは毎日朝から晩まで外来で診察しますので、これまで長すぎた大学病院での待ち時間はほとんどなくなるはずです。必ず、ついてきてよかったと思っていただけるよう頑張りますので、安心して受診してください。
そして、これまで診療に携わらせて頂いた癌患者さん、ハイリスク患者さんたちの治療や診療はできませんが、うちのクリニックに遊びに来ていただくのはいつでもウエルカムです。大学病院での専門的な診療や治療は残念ながらうちではできませんが、今まで通り、治療の悩みや相談などに乗ることはできます。何かあったときは、いつでも相談しにきてくださいと本心から思っています。気軽にお立ち寄り頂いて、元気なお顔を見せに来てくれるだけで私はうれしいです!
開業はなにもかもわからず、すべてが初めてで手探り状態ですが、熱い思いとハードワークで乗り切ります。一生懸命がんばって女性の役にたてる日本一のクリニックをつくるのでぜひとも応援よろしくお願いします!