よくあるけど見逃されがちなつらい症状
女性はライフステージにより大きくホルモンバランスが変化します。そのホルモンバランスのゆらぎによってさまざまなつらい症状が出現しますが、更年期女性や妊娠出産時期の女性の多くが経験する手指の痛みや腫れ、指のこわばりもその一つです。
更年期女性や妊娠出産を経験した女性が手指の症状を自覚して整形外科など受診しても、「リウマチではない」「手の使い過ぎだから手を休めてください」「歳のせい」といわれるだけでなかなか症状の改善につながらず、適切な治療を受けられていない女性がしばしばいらっしゃいます。
今まで診断のつかなかったこういった症状は、実は女性ホルモンの不足によって生じていることが近年わかってきました。こういった更年期女性に特徴的な手指の症状(整形外科的な医学用語では、ばね指、へバーデン結節、ブシャール結節、手根管症候群、母子CM関節症、ドケルバン病)を総じてメノポハンドと呼ばれるようになってきました。メノポハンドはこれまでの整形外科的なアプローチだけではなく、婦人科のホルモン治療のアプローチを行うことで症状の改善が期待できます。
メノポハンドの特徴
- 更年期女性や産後授乳期女性に起こりやすい
- 手指の痛みと腫れ
- 指のこわばりや動きの制限
- 日常生活に支障をきたす程度の痛み
上記のような特徴があります。放置することで7-10年で手指の不可逆的な変形につながることがあるため、適切な治療介入が必要な疾患です。
女性ホルモンとメノポハンドの関係
どうして女性ホルモン(エストロゲン)が減少してくると、手指の症状がでるのでしょうか?実は、女性ホルモンの受容体は子宮や乳腺だけではなく、全身の関節や腱周囲にある滑膜にも多く存在していることが最新の研究でわかってきました。エストロゲンは血管を拡張し、滑膜を柔軟に保つことで腱や腱鞘を保護しています。しかし、閉経期や授乳期に体内のエストロゲン値が急速に低下すると、滑膜を柔軟に保つことができなくなり、腱や関節が腫れて痛み、動かしにくくなり、手がこわばります。とくに睡眠中は体を動かさないため手先の血流が悪くなるため、血流にのって十分なエストロゲンが手指に運ばれません。また、冷えが強い方も同様に血管がしまって手指の血流が悪くなるため手先のエストロゲンが不足します。こういった症状が、朝に多い、冷え性の方に多いのは血液循環が悪いことが大きな要因です。
メノポハンドの治療法
- ホルモン補充療法(HRT)
- 漢方
- エクオール
- ビタミンE
メノポハンドの症状は、女性ホルモンの欠乏によって生じるため、女性ホルモンを補充してあげることで治療することができます。とくに更年期女性の場合は、メノポハンドのほかにもホットフラッシュ(ほてり)、イライラや抑うつ(精神症状)、膣炎などのさまざま症状を合併していることが多く、すべての症状に効果が期待できるホルモン補充療法のよい適応になります。
ホルモン治療のほかにも、体の冷えを改善する漢方やむくみを改善する漢方もメノポハンドに効果があります。漢方薬が体に合っている方にはお勧めですし、ホルモン治療と併用することで相乗効果が期待できます。
エクオールは、体の腸内細菌によって大豆イソフラボンから代謝されてできる物質です。女性ホルモンに類似した作用があることがわかっており、女性ホルモン補充療法の代替治療として注目されています。エクオールを自分の体から生み出せる人は、二人に一人といわれており、腸内細菌が大豆イソフラボンを代謝できない方はどれだけ大豆製品を接種してもエクオールを作ることができません。また、1日に必要なエクオールを体内で作り出すためには、多くの大豆製品を毎日摂取する必要がありますので、なかなかハードルが高いです。エクオールでの治療を希望される方は、治療データが豊富にあるエクオール製品(エクエル:大塚製薬)をクリニックで取り扱っておりますのでご相談ください。
まとめ
メノポハンドは、更年期の症状の一つであるという理解はまだ十分とはいえませんが、放置することで手指の変形につながり、女性のQOLを大きく損なう重大な疾患です。治療が必要な方を治療ができる施設へつなげるためにメノポハンドという疾患があると啓発していくことが重要だと考えます。
お困りの症状がある方は、更年期医療の専門家に相談することをお勧めいたします。
投稿者プロフィール
- 大学病院で10年以上、診療と研究に従事してきました。産婦人科だけではなく、尿漏れや頻尿などの女性泌尿器疾患、高血圧や脂質異常症などの女性の生活習慣病の予防治療に力を入れています。漢方マニアです。美容医療が趣味で自分にもいろいろ試しています。当院では、自分がやってよかったと思える美容医療だけを厳選して提供してます。なんでもご相談下さい!
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