このビッグウェーブに乗るしかない
お久しぶりです。院長です。
ありがたいことに毎日忙しく過ごさせていただいています。
開業して5か月目が終わり、自分なりに地域医療への貢献の方向性がなんとなくわかってきたところと言いたいですが、現在、開業早々に人事労務問題に直面しており、開業医の先輩たちが全員言っていた「人事労務の問題は永遠の課題」という言葉の意味を身をもって思い知らされました。
質の高い医療を継続的に提供していくためには、当院の理念に共感してくれる優秀なスタッフをたくさん雇用する必要があります。うちのクリニックの評判がいいのはすべて、スタッフが本当に一生懸命やってくれて患者さんに親切に対応してくれているおかげです。地域医療に貢献できる質の高いクリニックにするために、今後もいい人材をどんどん雇用していきたいと思っていますので、我こそはという方は当院までぜひ応募してきてください。女性の健康をサポートする医療のやりがいはめちゃくちゃありますし、残業代もすべて支給します。有休も全部とってOKです。大型連休あり、年間休日120日以上です。履歴書お待ちしております。
ところで、タイトルのビッグウェーブってなんだろうと思われた方もいますよね。
ビッグウェーブ級にすごいって意味なんですけど、何がすごいって子宮頸癌を予防するワクチン(HPVワクチン)を接種しにくる女の子が今、ものすごい勢いで増えていることです。
40代以上の方は、記憶にあると思いますが、10年前に副反応騒ぎで積極的な接種勧奨が差し控えられていたあのワクチンのことです。その後の追跡調査で、問題となった副反応との因果関係が科学的に否定されています。この10年間に日本以外の世界中の国で接種され続けたのに副反応の問題が起こっていないこと、実際に海外の子宮頸癌がすごい勢いで減ってきていることから日本でも2年前に子宮頸癌予防ワクチンの積極的接種勧奨が再開されました。
私は子宮頸癌ワクチンの研究をずっとしていたので、ワクチンの有効性と安全性はわかっていました。ワクチン接種が止まっている10年間の間でも、担当させていただいた患者さん一人ひとりに「娘さんはいるか?」「ワクチンは絶対に接種した方がいい」「ワクチンは安全であり、非常に効果が高いから」と説明してきました。一部の患者さんは、私の言葉に真剣に耳を傾けて娘さんを連れてワクチンを打ちに来てくれていましたが、ほとんどの方は「考えておきます」と社交辞令で終わるか、「何があってもうちの子にはワクチンは絶対に打ちません」と拒絶されることが多くて悶々としながら診療をしていました。
今から思うと、あの雰囲気の中で、全然関係ない主訴で受診してきたのにかかわらず、いきなり娘がいるかどうか聞いてきてワクチンを打った方がいいといってくる医者に拒絶反応を示すのは至極真っ当な反応だと思うし、もっと違うアプローチがなかったのかと今は反省しています。ただ、私は大学病院でずっと子宮頸癌の患者さんの診療をさせてきてもらったので、20代で癌になることの怖さ、30代で癌になることのつらさ、小さな子どもを残して亡くなってしまった方の無念さは、ほかの方よりほんの少しだけわかっているつもりでいるんですよね。自分なら、自分の娘には同じ思いをしてほしくないし、防げる病気があって、その方法も確立してるのにそれをしないのは絶対おかしいだろうって思います。そして、その気持ちは目の前の患者さんも同じだと思うんですよね。
このブログを読んでくれている方は、キャッチアップ接種のことをご存じだと思いますが、接種期限が来年の3月と迫ってきているんですよね。3回すべての接種を期間内に完了するために9月中に1回目の接種を終了する必要があります。すこしでも接種率を増やすために、うちのクリニックではすべての問診表に「子宮頸癌ワクチンの接種歴」と「ワクチンに関する情報提供は必要か?」の文面を大きく入れて、希望される方には、スタッフ総出でワクチンの説明をしてきました。その他にも、ワクチン希望者はいつでも受け入れる。ワクチンは診察順位を優先して待ち時間なしで接種する。平日土日に来れない遠方の方、学校がある方、仕事をしている方のために月に1回日曜日もワクチン接種のために診療するなどの作戦を立ててきました。
少しずつですが、子宮頸癌ワクチンを接種する方が増えてきていい傾向だなと思っていたのですが、8月に入って一気に接種希望者が増加しました。うちみたいな小さなクリニックでもワクチンを50個単位で発注しても在庫がすぐ切れるくらい接種者が多いです。この接種希望者増加は全国的な傾向のようで、接種期限が迫っていることや夏休みの影響もあるのかもしれませんが、これはとても素晴らしい傾向だと思います。以前のブログでも書きましたが、今の若い世代の子はワクチンのネガティブキャンペーンをそもそも知りません。また、スマホによる情報ネットワークの利用に長けているため、情報の取捨選択が非常に上手く、情報の真偽を定め、正しい知識を正確にもっているように思います。
ワクチンを接種しにくる女の子たちに、「どうしてワクチンを打とうと思ったの?」「何がきっかけでワクチンのことを知ったの?」と聞くと、「打った方がいいから」「みんな打ってるから」といった言葉が返ってくるようになりました。
これって本当にすごいことだと思いませんか?信じられません。
これまで日本中の産婦人科医が絶対に打った方がいいと目の前の患者さんに伝えてきても伝わらなかったメッセージが、今の若い子にはしっかり伝わっています。
「みんな打ってないから」打たないじゃなくて、「みんな打ってるから」打つ
これって日本中の産婦人科医全員が聞きたかった言葉じゃないでしょうか。涙が出そうです。
WHOはみんながワクチンと検診を受けるようになれば、2060年を目途に子宮頸癌という病気がこの世から根絶できると推定しています。過去に天然痘というたくさんの方が苦しんだ病気がワクチンの力で根絶できたように、子宮頸癌という病気も同じく根絶できるはずです。最近のワクチン接種のビッグウェーブを目の当たりにして私は確信しました「日本でも子宮頸癌撲滅できる」と。
俺たちの気持ちは、ビッグウェーブおじさんと同じ!
乗るしかない このビッグウェーブに!
9月もバンバンワクチン接種していきます!がんばっていきましょう!!