保険でできるワキ汗治療【エクロックゲル】について

ワキ汗は病気？

汗が出ること自体は体の自然な生体反応であり、熱を放出したり、皮膚を保護したり、人体にとって様々な重要な働きがありますので、それ自体は病気ではありません。

しかし、シャツに大きな汗の染みができる、日常生活に支障をきたすほどの多量の汗が出るなどの症状が明らかな原因がないのみ認められる場合は、原発性腋窩多汗症の可能性があります。

原発性腋窩多汗症チェック

上記の６症状のうち２項目以上あてはまり、多量のワキ汗に６か月以上悩まされている方は、それは体質ではなくワキの多汗症という病気の可能性があります。

現在クリニックや病院でできるワキ汗の治療はいくつかあります。

外用薬

汗を出す神経伝達をブロックする塗り薬を塗布します。塗った場所にのみ効果を認めます。【保険適応】

汗を分泌する汗腺の出口に薬剤を塗って栓をします。【保険適応外】

注射

美容医療にも多く使用される薬剤です。注射することで汗を出す神経をブロックして汗を止めます。【保険適応になることもある】

内服

汗を出す神経をブロックする薬を内服します。全身に効いてしまうため副作用が出ることがあります。【保険適応】

手術

外科的手術により汗腺を摘出する手術です。

どれにもメリットとリスクがありますが、ワキ汗多汗症の医師の診断があれば処方できる外用抗コリン薬【エクロックゲル】が局所のみの汗のコントロールに適しており、なおかつ保険適応であるため使用することが多いです。内服の抗コリン薬は全身に効果をたすため、便秘や目や口の渇きなどの副作用が出ることがあります。ボトックスも効果を認めますが、治療費も高額になりやすいです。

エクロックゲルは令和2年に日本で初めてワキの多汗症に対する外用薬治療として認められたお薬です。

エクロックゲルは抗コリン作用のある外用薬で、ワキに塗布することで吸収されワキの部分にある汗腺の神経受容体をブロックして、汗の分泌を抑えます。１日１回の使用でワキ汗を抑えることができます。日中の多汗症を抑えたい場合は、朝にワキへ塗布するとより治療効果が得られます。

毎日使用される方で１本でおよそ一か月程度使用できます。お薬代は３割負担の方で、約1500円程度になります。

↓ワキ汗治療の情報・サポートサイトです。

汗腺には、【エクリン汗腺】と【アポクリン汗腺】の二種類があります。ワキガの原因は主にアポクリン汗腺から分泌された粘液性のある汗に細菌が繁殖して悪臭を起こすと考えられています。

現在ワキ汗治療に用いられる薬剤の多くは、エクリン汗腺の動きをブロックするものなので、一般的にワキガへの治療効果は謳われていません。もっとも現実的な治療法の一つのエクロックゲルに関しても、エクリン汗腺の動きを止めることで効果を発揮するためワキガに効果があるとはいえません。

しかし、個人的な治療経験では、ワキガを併発するワキ汗多汗症の患者にエクロックゲルを使用して臭いが改善したと患者さんに喜んでいただけたことがあるので、まだ公的な治療効果とはいえませんが少なからず効果を示すのではないかと思っています。【一医師の経験則です】

ワキガに対するエクロックゲルの治療効果に関しては私が探した範囲では、まだ根拠となりうる論文がありませんので、新しいエビデンスが出ましたらあらためて紹介させていただきます。

ワキ汗の悩みは相談しづらく、一人でお悩みになられている方もいると思います。とくに10代の若い方の場合は深刻な悩みにつながりかねません。最近では、症状の改善が期待できる外用薬も発売されていますので、お一人で悩まずにまずはご相談ください。

坂本人一院長: 大学病院で10年以上、診療と研究に従事してきました。産婦人科だけではなく、尿漏れや頻尿などの女性泌尿器疾患、高血圧や脂質異常症などの女性の生活習慣病の予防治療に力を入れています。漢方マニアです。美容医療が趣味で自分にもいろいろ試しています。当院では、自分がやってよかったと思える美容医療だけを厳選して提供してます。なんでもご相談下さい！